物としての写真資料

資料ガイド「写真資料のガラス原板」では、「AGFA」の文字の入るガラス原板を紹介しました。このように、写真資料には被写体として何が写っているかというだけでなく、物としての価値もあります。

19世紀後半、写真の普及し始めたころには、小さな桐箱に入ったガラス板の写真が登場しました。これは湿板写真で、そのままではネガ像(陰画)ですが、裏面に黒色を塗布することでポジ像(陽画)として見ることができます。それを観賞用兼保存用として桐箱に入れました。箱の蓋の表や裏などに、撮影年や被写体の人名などが墨書されることもあり、それも大事な情報になります。

館古562 中村家文書 61 人物(女性)肖像写真

同じ頃の紙焼き写真は、薄手の鶏卵紙(卵白等を塗った紙)に焼付けしたため、台紙に貼って観賞と保存を兼ねることが一般的でした。写真館での撮影の場合、台紙の裏面には写真館の店名などが印刷されていました。そこに撮影年などを墨書することもありました。

また、写真を写真帳(写真アルバム)に貼ることもあります。写真帳には、折本形式のもの、冊子形式のものがありました。輸出用の写真帳には、表紙に漆絵を貼り付けたものもありました。『撮影鑑』は折本形式の写真帳で、表面・裏面ともに鶏卵紙に焼き付けられた写真が貼られています。

撮影鑑2

ガラス板を見ると、裏面の脇などに撮影年、撮影場所の文字が書き込まれているものがあります。また、ガラス板には、色調の強弱を付けるためなど、いろいろな理由で画像を修正した跡を残すものもあります。他にも引き延ばしや印刷の指定に使うため、マスキングテープを貼ったものもあります。写真資料を物として見ると、写された画像以外にもいろいろな情報が引き出せます。

(黒川翠山撮影写真資料No.1017
(黒川翠山撮影写真資料No.1721)
*左端に反転した文字で「日光東照宮皷楼及廻燈籠 阿蘭陀燈籠、虫食鐘」、下端に「38.10.17」と書かれている。

(写真資料から96 資料課 大塚活美)