茶道具を擬人化? 中国の茶書『茶具図賛』

動物、刀剣、軍艦、国・・・さまざまなモノを擬人化した漫画、アニメ、ゲームなどが流行していますが、700年前の中国でも道具を擬人化して解説するユニークな書籍が刊行されました。それは『茶具図賛』という茶書で、茶道具を人に見立てて紹介しています。

『茶具圖贊』は、『茶經』という別の茶書の上巻末尾に付録として収録されています。『茶具圖贊』は、冒頭に「茶具十二先生姓名字號(茶道具12氏の姓名・字・号名)」とある通り、「12名の」茶道具を、茶葉の加工から飲むまでの使用順に列挙し、それぞれに人のような姓名、官職名、字(あざな=中国で本名とは別につけた呼称)、号名をつけています。

例えば「金法曹」の場合、官職は法曹(司法官)、名は研古・轢古、字は元鍇・仲鏗、号は雍之旧民・和琴先生で、「司法官の金氏」となります。「金法曹」は、団茶(茶の葉を蒸し、ついて固めたもの)をすりつぶすのに使う薬研(やげん)のような道具です。回転する金属の円盤と受け皿の2つの部品があるため、これだけは名や字が2つずつあります。名づけには、道具の特徴にちなんだ漢字を当てはめており、金法曹は金属の部品があるので姓は「金」の、名前にはその働きから「研(みが)く」や「轢(ひ)く」の字を用いています。

続いて、それぞれの道具の外見を絵で示し、特徴を人の性格に例えて紹介します。先ほどの金法曹は、「柔らかいものを食べず、固いものを吐かずに噛み砕く。回転する円盤の動きは実にきっちりしている(中略)なんとも素晴らしいことだ」と紹介されています。

そのほか、「堅固でまっすぐな心を持つ石転運」(漕運長官の石氏=茶葉を粉末にするための石臼)や「些末なことも適当にはせず、穂を動かして茶の粉末を散らさないよう集める宗従事」(地方官補佐の宗氏=茶の粉末を集めるための刷毛)などの道具が紹介されており、700年前の中国ではどのようにお茶が飲まれていたのか窺い知ることができます。