京都を襲った大火の記録

2018年は大阪北部の地震や豪雨、台風上陸もあり、酷暑も重なって多くの災害が発生した年となっています。
このような災害が発生するとテレビや新聞で多くの情報が流されますが、江戸時代でも火災や地震などが発生するとその状況・経緯をまとめた本が多く刊行されました。
それらの資料は過去の災害を知る貴重な記録や教訓となっています。

花紅葉都咄』もその一つで天明の大火について書かれた資料です。
天明の大火とは、京都市内で天明8年正月30日(1788年3月7日)の早朝に起こった火事で、京都での最大の火事と言われています。火元は鴨川の東、団栗辻子(どんぐりのづし)だったため、「どんぐり焼け」とも呼ばれました。
この火事は、強風に乗って燃え広がり北は鞍馬口通、南は七条通、東は鴨川の東、西は千本通までの範囲が焼け、2日後の明け方にやっと鎮火しました。

この火災で3万7000軒の家が焼け,6万5000世帯が住む所を失いました。御所や二条城,東西の本願寺も焼失しました。

本書には、天明の大火の経過や被害状況、奇談、そしてたくましい復興の様子などが聞書きと資料に基づいて詳しく記されています。
全3巻ですが、中巻と下巻には目次が無く、書体も違う部分もある事から、集めた情報を元に逐次刊行したと思われます。

内容は上巻では物語風、中巻は記録風の文章で火事の様子やその後の京都の市内の様子を描いています。下巻はその後に聞いた話をまとめています。
特に上巻では、火事の様子を描いた挿し絵が3図載っており火事の様子が視覚的に伝わってきます。

花紅葉都咄 」火災の様子

また、中巻ではこの大火で函谷鉾や蟷螂山など祇園祭の山鉾のいくつかが被災した事も書かれています。

被災した山鉾の記述(2巻14コマ)

天明の大火についてはその他にも絵と文章で書かれた『初午まふで

それに上巻1冊を新刻し、書名を改題した『萬民千代乃礎

被災した施設や寺社の一覧がある『九陌火災略記 天明大火実録

相国寺住持の大典禅師が書いた目撃談に注を追加して刊行した『平安鬱攸記(へいあんうつゆうき)』

などがあり、いずれも京の記憶アーカイブで画像を閲覧できます。

また、「新撰京都叢書 第10巻」には「花紅葉都咄」、「萬民千代乃礎」の翻刻文、「平安鬱攸記」の影印版が収録されています。